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第41回 資源配分メカニズムのミクロ・ポリティクス
 

2004年7月24日(土)10:20-18:00

東京大学先端科学技術研究センター13号館 109号室

1. ワークショップの目的

近年、多くの途上国で行われている森林保護政策は、往々にして、その意図せざ る結果として、特定地域の人々に負荷がかかり、場合によってはそこに住む人たち の生活資源の収奪を正当化する結果につながっている。このような問題を、今回の ワークショップでは、「環境」の問題の視点からではなく、「資源の配分」の「ポ リティクス」の問題として捉え、ある種の意図的な配分行為の結果が、意図せざる 形で、人々の欲求と機会に影響を及ぼしている政治性に注目する。  そのような資源配分のポリティクスに関しては、経済学において「資源配分メカ ニズム」という概念として捉えられ、価格シグナルを媒介とした市場メカニズムの 機能と機能不全に高い関心が払われてきた。しかし、人々の資源や機会の配分に影 響を及ぼしてきたメカニズムは市場以外にも多く存在する。高等教育の機会の配分、 病院の臓器や薬品の配分もそうであるし、村落共同体における相互扶助、世帯内の 資源配分も、市場とは別の領域で展開する配分メカニズムであり、そこには独自の ポリティクスが展開されており、何らかの配分の正義が存在していた。  そこで本ワークショップでは、それらの資源配分の政治性と、配分の正義のあり 方について総括的に議論を行う。まず、この問題意識を具体的に掘り下げていく材 料として、資源を人々の福祉に転換する能力に関する理論的な位置づけを検討し、 その配分の正義の問題を哲学的な正義論に位置づける。各種の資源配分プロセスで 不利な条件におかれてきた途上国の貧困層の戦略に光を当て、グローバルな環境正 義論の視点から分析する。そして、米国のダム撤去を事例にして、人工物の配置や 設計のもたらす政治性、さらに、資源と人々との関係のあり方を、技術論の観点か ら論じる。  そのように、従来は資源配分メカニズムの一つとして見られることが少なかった ものを、そう捉え直すことによって、自由や束縛、連帯や孤立、支配や従属といっ たミクロポリティクスを規定している要因を広い視野から検証し、そこにおける配 分の正義のあり方について議論を深めたい。

2. ワークショップの時間割

10:20-10:40 問題提起    

10:40-11:10 話題提供1

  佐藤 仁(東京大学/資源政策、環境政治・行政学)

  「資源、転換力、意図せざる配分」

人々の暮らしの向上に役立つ資源や機会はどのような力とメカニズムによって配分 されるのか。経済学は、資源配分メカニズムの研究を標榜してきたが、実際に経済 学が取り扱ってきたのは財の配分であった。財は、市場取引になじむ形で商品化さ れたものを指すのに対して、資源は、人々の働きかけによって社会的な機能を付与 される潜在的有用物である。資源は、原料とも異なり、広い用途を想定される素材 の束であるが、それゆえに、異なるパワーをもつ人々が同じ資源に対して異なる機 能を付与し、競合の問題が生じる。この報告では、J.エルスターやA.センの議論を 援用しながら、資源や財の保有と人々による実質的な機会の獲得には距離があり、 アクセスと転換力という二つの制度的要因の考察が、公正な分配(distribution)を 議論するときに不可欠なつなぎになることを論じる。同時に、意図的な配分の枠を 超えたところで作用する配分メカニズムの重要性を喚起したい。

11:10-11:30 レスポンス1

       川本隆史(東京大学/社会倫理学)

11:30-12:00 討議1

        昼食

13:00-13:30 話題提供2

  青山和佳(和洋女子大学/開発経済学、地域研究(フィリピン))

  「フィリピン、ダバオ市のサマ移民のキリスト教受容――生活水準改善への微細な企て」

開発過程を経て、フィリピン南部、ミンダナオ・スルー地域の生活利便性はマクロ 的には改善したが、人びとの間の生活水準の格差もより明白になってきた。ミンダ ナオ問題といえば、「ムスリム対クリスチャン」の対立構造で議論されることが多 い。だが、ミンダナオにはクリスチャン以外にも多数の非イスラーム教徒マイノリ ティが居住しており、彼らの存在が問題を複雑化していることを見逃してはならな い。 ダバオ市のサマ移民は、そのような人びとの例である。彼らは居住地における優勢 な周辺ムスリム諸集団と政府との武装対立や治安悪化のために、出身地を離れ半ば 難民としてダバオ市に流入した。そして、政治的交換・経済的交換のいずれにおい てもシステムから排除されているため資源配分の受益者となりえず、困窮した生活 を強いられている。本報告では、彼らが日常を生き延びるためにどのような小さな 企てを重ねているのか、彼らにおけるキリスト教受容の社会的意味を検討しながら 考えてみたい。 2002年8月から2003年3月までの期間に断続的に収集した一次資料を用いる。キリス ト教化が進む以前のサマ移民の生活水準とその背景にある制度的条件を概観した上 で、キリスト教の受容過程を当事者であるサマ移民の視点から明らかにする。キリ スト教受容に被差別的な地位からの脱却と社会的地位の向上という微細な企てを接 合したサマの主体的な意図を検討する。短期的にみて、これらの企てはサマ移民の 貧困脱却に結びついていないというのが報告者の見解である。

13:30-13:50 レスポンス2

       石山徳子(明治大学/政治・人文地理学、地域研究(アメリカ))

13:50-14:20 討議2

14:30-15:00 話題提供3

  湊 隆幸(東京大学/マネジメント,ファイナンス,リスク分析)

  「人工物の政治性:ダム撤去を事例に」

本セッションでは、「技術の多面性」と「役に立つとはどういうことか」という点 を中心に議論を展開し、荒瀬ダム撤去計画の事例を交えてさらにこの点の考察を進 める。 前半の議論においては、「役に立つとはどういうことか」に関して、例えば、従来 の工学における機能性をベースにした観点ではなく、技術に内在する便益とリスク、 その影響や因果関係に関連する問題を検討し、それを「技術の多面性」として議論 したい。また、公共物としてのインフラ構築における「価値の対立」について、そ れを本研究が関心を持つ「資源」の特性と関連づけて検討する。さらに、資源がイ ンフラという人工物に変換される過程を簡単なモデルで示すことにより、インフラ 構築が人々の価値や行動にどう影響するかについて事例研究を行う場合の分析視点 を示す。 後半の荒瀬ダムの事例では、「作られたモノが何の役に立ったか」という視点から、 ダム撤去に関わる、人の価値観、選択、決定規準、合意(あるいは不合意)の対象、 ジレンマ等を取り上げ、加えて、ダム撤去の経験をどのように将来のインフラ構築 に活用できるかなど、広く一般的に議論する。

15:00-15:20 レスポンス3

       直江清隆(山形大学/技術哲学)

15:20-15:50 討議3

          休憩 

16:10-18:00 総合討議

    司 会 鬼頭秀一(恵泉女学園大学/環境倫理学、科学技術社会論)

18:00-19:00    懇親会  

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このワークショップは、「人文社会科学振興のためのプロジェクト研究 (資源配分メカニズムと公正)」との共催です。

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