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1.ワークショップの目的
具体的には、まず清水瑞久(社会学)が、脳死・臓器移植をめぐるニュース番組の解析を通じて、マスメディアの科学技術の扱い方と視聴者への影響の実相を検討する。次に大黒岳彦(メディア論)が、ルーマンの社会システム 論を援用して、マスメディア自体の存在性格と機能の仕方に関して原理的に考察する。さらに、武田徹(ジャーナリスト)が、自ら過去数年間にわたって企画・統括してきた「科学技術ジャーナリスト養成講座」について、その問題意識と実践成果を総括して、今後に途を拓く。 しかしながら、これら3名は少なくとも現在にあってマスメディアそのものに生活の場を置く者ではない以上、そこからの問題提起は観念的になる可能性がないとはいえない。それゆえ、現役のマスメディア人として、「ニュースJAPAN」ディレクターの岩澤倫彦と新聞社報道部記者の岡本晃明が、内部の経験と現場感覚に即してかかる問題提起に対して批判的なコメントを加え、また別の観点から提言する。司会・進行は小松美彦(科学史)が務める。 2.ワークショップの時間割 12:45-13:00 趣旨説明 小松美彦 (東京海洋大学・科学史) 13:00-13:45 話題提供1(質疑応答10分を含む・以下同) 清水瑞久 (大妻女子大学・社会学) 「脳死・臓器移植とテレビニュース」 本報告は、子供の脳死・臓器移植問題を実際に報道したニュース番組を題材として取り上げ、本問題をめぐるディスコース構成のあり方について、メディア研究の側から具体的な分析を行おうとするものである。ニュースとは、 取材現場やスタジオでの映像や音声・ナレーション、そしてテロップや音響などによって作成されるものであるが、それらモードの複合的な組み合わせにおいて、ディスコースは生成する。題材として取り上げる番組では、臓器移植を必要とする子供とその家族、そして家族を支援するグループの内側にカメラを寄り添わせ、子供の生への望みを断ち切る障壁として立ちはだかる日本の医療―法制度を「問題」として告発していく。番組は、終始一貫して臓器移植推進のディスコースを組み立てていくのであるが、これを駆動するのは、残念ながら移植手術を受けられずに逝去した子供の、その死に対する悲しみの感情である。かつてあった命がすでにない。命の不在を表徴する写真・映像といったモードが、番組内で効果的に使用され、「死への悲しみ」という誰も抗うことのできない感情を表出させていくのである。このような感情誘発型のニュース報道において、臓器移植を可能とさせるもう一方の現実、「脳死」と判定される子供の存在は、「命のリレー」という抽象によって塗りつぶされていく。以上のようなニュースのあり方について、オーディエンス分析の結果も交えながら、報告を行いたい。 13:45-14:30 話題提供2 大黒岳彦 (明治大学・メディア論) 「マスメディアとは何か?─科学技術報道に即して─」 「ジャーナリズム」「ジャーナリスト」という言葉は、反体制・反権力あるいは真実の追及・悪の告発といったある種の価値判断や態度表明のニュアンスを纏っているように論者には思われてならない。本ワークショップでは、 “ノンポリティカル”に過ぎる、という批判を承知で敢えて、マスメディア(「ジャーナリズム」ではなく)の社会的な機能を考える地点から議論を始めたいと思う。今回のワークショップのテーマである「マスメディアと科学技術」との関係を考えるにあたってもそれが必須の手続きであるように思えるからである。たとえば常時放送されるニュースやワイドショーで扱われる科学技術に関する報道は巨大技術や最新医療技術の賛美とはいわないまでも、推進的な内容であることは周知の事実である。だが他方で、最新の科学技術の反対キャンペーンを張り、その社会への導入を阻んできたのもまた同じマスメディアではなかったか? マスメディアがトータルとして科学技術にいかにコミットしているのか、またそのコミットのあり方は高度情報社会において変わりうるのか、あるいは変わらないのか、ルーマンの社会システム論的な見地を作業仮説的に用いながら考えたい。 14:30-15:15 話題提供3 武田徹〈東京大学・ジャーナリスト〉 「報道改革のための科学技術ジャーナリスト教育プログラム」 発表者は03年から東京大学先端科学研究センターで科学技術ジャーナリスト養成講座の運営を担当してきた。そのコース設計には日本の科学技術ジャー ナリズムの現状に対する担当者の問題意識が投影されており、現在の科学技 術ジャーナリズムの維持発展ではなく、それを批評的に乗り越えるための人 材養成が目指された。特徴を幾つかあげれば、まず「翻訳者モデル」の排除 をまず徹底させた。確かに科学技術の現状の正確な伝達はジャーナリストの 使命である。そのため科学技術専門家の言葉を大衆的な表現に「翻訳」する 能力がジャーナリストには求められる。だがそこで終わってはジャーナリス トは科学技術界のスポークスマンにしかなれない。科学技術ジャーナリズム の使命はむしろ科学技術文明の歴史的・社会的位置づけであろう。そう考え て自然科学的知識だけでなく、人文科学、社会科学的知見をあえてカリキュ ラム設計に反映させた。そしてジャーナリズム組織という共同体や、閉じた 「送信者―受信者」共同体に報道が縛られている状況の改善にも重点を置い た。自らの属する共同体にのみ貢献しようとする報道は公共的なジャーナリ ズムたりえない。そこで共同性に縛られた既存メディアに依存せずに発信力 を担う新規メディア獲得技術までを習得の対象としたし、コース運営サイド としても第三者性を担保しうる新メディアの創設を射程に入れて新世代のジ ャーナリストの支援を目指した。こうした試みが、科学技術ジャーナリズム の可能性を開花させてゆくのだと考えている。 休憩 15:30-15:55 コメント1 岩澤倫彦(「ニュースJAPAN」ディレクター) 15:55-16:20 コメント2 岡本晃明(新聞社報道局記者) 16:20-16:50 話題提供者からの応答 休憩 17:00-18:15 総合討議 司会 ・小松美彦 18:30-19:30 懇親会 _______________________________________________________________________
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