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1.ワークショップの目的 対象となる10年間は、日本経済の「失われた10年」が自覚された時代であると同 時に、日本が経済の「知識化」と「グローバル化」に本格的に組み込まれていった時 代である。この間、日本は、欧米諸国との競争だけでなく、中国を中心とする東アジ アの製造業とインドのソフトウェア産業の挑戦にも直面した。2000年以降、日本 の輸出入の地域別シェアにおける対ASEAN・東アジアの優位が定着し、対北米・ヨー ロッパを凌駕するに至った。 総務省統計局のデータによれば、この10年間に、日本における年間の研究開発費総 額は13兆6千億円(1995)から16兆8千億円(2004)に増え、その約70%が企 業による支出であった。この増加分を担ったのも企業である。その多額の支出によっ て、日本の産業技術とその成果である工業製品やサービス活動はどのように変化した かを見たい。それには、 (1)海外から地域に及ぶマクロな構造変化、とくに所得格差と不均衡が生み出した 市場の特性の変化、 (2)市場の変化に応じた製品やサービスの開発や生産システムの変化、 (3)上記に対応した個別企業の組織と行動様式の変化、 等に即して見てゆく必要がある。今回は、第1回として、主として(1)の構造変化 に関するテーマを中心に扱う。 2.ワークショップの時間割 14:00-14:15 はじめに 「世紀転換期日本の産業技術」 後藤邦夫 14:15-15:05 話題提供1(討議10分を含む・以下同) 後藤邦夫(NPO法人学術研究ネット) 「10年の概観と研究開発活動を中心とする主要テーマ」 先進工業国の経済の知識集約化は、1970年代に既に始まっており、いわゆる重化 学工業が産業社会をリードしていた時代に形成された社会経済システムとの適合性が 破れ、混乱を伴う転換が進みつつあった。日本における本格的な転換はポスト冷戦期 の1990年代まで引き延ばされ、「知識集約化」と「グローバル化」がバブル崩壊 で傷ついた日本経済に急激な転換を強いることになる。高度成長期以来の目標であっ た「国土の均衡ある発展」も「一億総中流化」も1990年代には崩れ、M型所得分 布が形成され、市場も二極化する。(海外も同様である。)その結果、「高品質・高 価格・高収益」が約束される富高所得層向けビジネスと、「量産・低価格・低収益」 という在来型ビジネスという業種横断的な「ダブル・トラック構造」が発生する。加 えて、資本と市場における「グローバル企業群」と「ドメスティック企業群」という 分岐も現れる。 1995年−2005年の日本のマクロ経済指標が、平均的な観察では単に停滞的に 見えたにもかかわらず、とくに後半期において、以下に例示したような分野で、活発 な研究開発投資、技術開発、工場立地が行われ、高収益企業が続出した。それは、 60年代の「大企業・中小企業の二重構造」とは別個の、上記のような複数の「新二 重構造」に帰せられるであろう。 *素材産業における知識集約化(自動車用鋼板、チタン系合金、液晶パネル用ガラス、 炭素繊維、12インチ・ウェハーなどにおけるシェア拡大など) *自動車産業における「電子化」「環境対応」「生産技術」等における優越性 *家電製品を含む消費財のデジタル化推進(プログラム内蔵部品の大幅採用) *高度部品産業の国内立地指向の拡大(半導体、強誘電体、磁気メモリ、光電素子、 コネクタ、自動検査装置等々の開発と生産) 「イノベーション」は、本来、成長のための「不均衡の探求」から得られた概念であ るが、今後、「新二重構造」に立脚した産業技術開発に基づく「持続可能な成長」の 可能性が問われることになる。 15:10-16:00 話題提供2 明石芳彦(大阪市立大学) 「生産の国内回帰:歴史的経緯と変化の背景」 貿易摩擦を未然に抑制するため、消費地に近い場所で生産する傾向が1985年の円高で 加速された。現地生産は、現地部品調達率の向上、現地開発という要求を受け、次第 に、基幹部品の現地生産へと進んだ。とくに、電子製品技術の標準化や、製品組立に 必要とされる部品調達が世界規模で容易となったことで、必要部品さえあれば世界の どこでも、類似水準の製品が生産できる状況が生じた。それは、製品組立に関係する 部品需要を世界規模で加速し、部品や製品の循環的な過剰生産・低価格競争を激化さ せた。 一方、市場での競争激化は低価格競争の次元だけでなく、新商品を短期間に販売し市 場需要の変化に速やかに対応する次元へと加速してもいる。そこでは、高付加価値商 品の製造に際しても、所定費用、品質、短納期、歩留まり、数量調整などの側面から 見て、材料加工、部品・中間財メーカーとの日常的で緊密なやりとりが要請されてく る。生産現場のこうした高い要求条件を満たす生産管理は、日本国内でしか実現しに くいと、一部の産業・企業で強く意識されるようになった。 加えて、韓国・台湾・中国の製造業は、ハイテク系製品の主要な素材、部材、部品、 さらには特殊加工用製造装置・システム、高度な工作機械、検査装置などを日本企業 からの供給に依存している。これには、日本企業における、素材等における開発技術、 生産技術、特殊な製造ノウハウ保有、操業技術等などが関係していると思われる。 こうした事情を背景に、日本の製造企業の一部は、各工程ごとの専業企業のノウハウ を積み上げた形の製造工場を日本国内に設立し始めた。 16:05-16:55 話題提供3 川端 望(東北大学) 「素材産業における競争戦略と革新:鉄鋼業の場合」 本報告の課題は、鉄鋼業を例として、素材・重装置型産業における競争戦略と革新の特 徴を明らかにすることである。日本高炉メーカーの業績は、1990年代から2000年代初頭 までは低迷したが、2002年以後は急速に回復し、史上最高益をあげるまでに至っている。 その評価も、成熟・衰退産業から日本のものづくりの代表格へと振れている。目先の業 績の変化に惑わされずに高炉メーカーの現状と将来を見通すには、バブル崩壊後の高炉 メーカーのものづくり能力の推移を冷静に検証するとともに、高炉各社の現在の国際競 争戦略について、それがものづくり能力にどのように依拠しているか、またそれをさら に高度化させるようなものとなっているか、海外各社の国際戦略と対比してどのような 特徴を持つか、という観点から検討を加える必要がある。 本報告ではこうした観点から、高炉各社が推進する高級鋼戦略を検討する。とくに研究 開発・設備投資、国際的な工程間分業とプロセス・リンケージの動向を分析することで、 高級鋼戦略が堅実で保守的な性格を持つことを明らかにし、鉄鋼業のグローバル再編の 中でその行方を展望する。 休憩 17:15-19:00 総合討議 19:00-20:30 懇親会 _______________________________________________________________________
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